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溢れる好きと君へのキス
第4章 ****
もう少しで出来上がるころに、部屋着に着替えた松野さんが出てきた。
「できた?」
「もう少しです」
「そっか、じゃあ洗濯物回しちゃうよ、お前なんか洗う?でも一緒には嫌か」
「いっやややいや!全然一緒でもいいです!でも大丈夫です自分でやります!」
「節水になるのに?」
「コインランドリー行きます!」
「…そう、わかった。んじゃそっちよろしく」
余計なことまで言ってしまった。自分がつくづく恥ずかしい。完全に温まった鍋をローテーブルに持っていき、箸、お皿、買ってきたビール、グラスを運ぶ。
「おお、できたな。食べよう」
「ビールおつぎしますね!」
「ん、ーーーいいよそんなもんで、はい」
「ーーーはい!ありがとうございます」
「じゃあ、いただきます」
「いただきます」
お鍋にうつして味を少し足しただけなのにこんなに笑顔で頬張ってくれる。ちょっとそう思っただけで胸がきゅんと苦しくて耐えきれず、ビールをくいっと飲んだ。
「お前今日も酔うなよ?」
「おつまみ美味しいんで飲み過ぎそうですよ」
「自画自賛か」
「これ母の味なんです」
「…うまいこれ。好きだなこの味」
“好き”の言葉に反応してしまう自分がいる。一回引っ込め私!!
お鍋半分を食べたところでお腹一杯になった私たちは席を立って食器を洗った。
「これ明日の朝?」
「そうですね、明日またあっためましょう」
「了解、じゃあラップする?」
「お鍋だから蓋すればいいんですよ!」
「…じゃあこっちはラップか?」
「そうですね」
一生懸命ラップを切ろうとしているがラップが悪いのか松野さんが悪いのか切れる気配がない。
「貸してください?」
「いややる」
「私のほうが早いですって、ほら」
「…貸せ」
「まだやるんですか?」
「できないままにしたくないだろ?」
「二重に?」
「念には念を入れてもバチは当たらないだろ?いけそうなんだけど、あっ」
松野さんの手からラップが滑りおち、箱の歯が私の手をかすめて下に落ちた。