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緑に睡る 〜運命の森〜
第1章 告白
公彦が帝国ホテルのメインダイニングに着いたのはきっかり夜の7時だった。
黒服のウェイターに恭しく窓際の一番良い席に案内されたのは青山からの申し送りがあったのだろう。
この日本で一番格式高いホテルに…しかも特別室に一カ月近くも泊まることが出来る人間など、富裕層の中でも数多くはいない。
伯爵家とはいえ、末の男子など冷や飯食いが多いのが貴族社会だ。
たいていは幼い頃に養子に出されたり、成人してからも婿養子に入ったりと活路を見出すのに苦労するのだ。

…しかし、青山史郎は違った。
彼はまるでそんな自分の立場を自由気儘に楽しんでいる節があった。
四角四面に生き、十代の頃から逼迫する家をどう立て直すか、幼い弟妹をどう育てるかに頭を悩ませ続けていた公彦には、青山は別世界の人間のように伸び伸びと闊達で、そんな彼に憧れと尊敬の念すら抱いていたのだ。
大学で知り合い、お互い性格が全く違うのに親友と呼べるほど仲良くなったのは、自分にないものを沢山持つ青山に強く惹かれていたからに違いない。
青山もまた、自分とは正反対の高潔で清貧な性格の公彦に敬意を払い、友情を深めてきた。
それは大学卒業後、青山がパリに渡り、美術商として暮らし始めても絶えることなく交流し続けてきたのだ。

「…待たせたな。鷹司」
良く通るバリトンが公彦の背後から聞こえた。
ゆっくりと振り返る。
「…青山…」
…公彦の親友、青山史郎がおおらかな笑みを湛えつつ悠然とこちらに向かって歩いて来た。


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