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緑に睡る 〜運命の森〜
第2章 第二の男
「ここでいいよ。ありがとう」
紳一郎は運転手にそう告げて、屋敷の裏門に車を停めさせた。
「…あの、執事さんがお茶の準備をされていましたが…」
遠慮勝ちに振り返る運転手に、
「少し遅れると伝えておいてくれ」
と、言い捨てると運転手がドアを開けようとするのも制して車から降りる。
…裏門から歩くのが一番早い。
紳一郎は足早に十市の小屋に向った。
…夜は雪になるかも知れないな…。
吐く息が白く凍りつきそうだ。
カシミアのマフラーをしていても寒気が押し寄せる。
早く十市に暖めてもらいたい…。
そう思うだけで胸が甘く切なく震える。
…冬の間はいつでも十市に会える…。
だから小さな頃から冬が大好きだった。
「…ずっと冬だといいな。だって、十市といつでも会えるもん」
そう言って抱きつくと、十市は優しく笑いながら抱き上げてくれた。
…14歳のあの日…十市が姿を消したあの日以来、冬は十市を思い出すから大嫌いになった。
毎年、十市が樅木を切り出し、設置していたクリスマスツリーも飾るのを拒んだ。
…けれど…。
今年は、またクリスマスツリーを飾れる。
紳一郎は一人でそっと微笑み、白い指先に息を吹きかけると、十市の小屋へと続く道を急いだ。
紳一郎は運転手にそう告げて、屋敷の裏門に車を停めさせた。
「…あの、執事さんがお茶の準備をされていましたが…」
遠慮勝ちに振り返る運転手に、
「少し遅れると伝えておいてくれ」
と、言い捨てると運転手がドアを開けようとするのも制して車から降りる。
…裏門から歩くのが一番早い。
紳一郎は足早に十市の小屋に向った。
…夜は雪になるかも知れないな…。
吐く息が白く凍りつきそうだ。
カシミアのマフラーをしていても寒気が押し寄せる。
早く十市に暖めてもらいたい…。
そう思うだけで胸が甘く切なく震える。
…冬の間はいつでも十市に会える…。
だから小さな頃から冬が大好きだった。
「…ずっと冬だといいな。だって、十市といつでも会えるもん」
そう言って抱きつくと、十市は優しく笑いながら抱き上げてくれた。
…14歳のあの日…十市が姿を消したあの日以来、冬は十市を思い出すから大嫌いになった。
毎年、十市が樅木を切り出し、設置していたクリスマスツリーも飾るのを拒んだ。
…けれど…。
今年は、またクリスマスツリーを飾れる。
紳一郎は一人でそっと微笑み、白い指先に息を吹きかけると、十市の小屋へと続く道を急いだ。