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緑に睡る 〜運命の森〜
第2章 第二の男
十市は厩舎にいた。
冬の間は年老いた馬丁の身体を気遣い、体力仕事は十市が引き受けているからだ。
「十市!」
叫びながら駆け寄り、その胸に抱きつく。
飼葉桶を置き、十市がしっかりと紳一郎を抱きしめる。
「坊ちゃん、お帰りなさい」
低い声を聞きながら、十市の分厚い胸に貌を埋める。
いつもの安煙草と革のジャケットと…今日は乾いた飼葉の匂いがする。
…大好きな…十市の匂いだ…。
「…会いたかった…」
…昨夜、あんなに激しく愛しあったばかりなのに、もうこんなにも身体が十市を欲している…。
甘えたように潤んだ瞳で見上げる紳一郎の白い頬を十市の節くれ立った大きな手が包み込む。
「…坊ちゃん…」
少しひび割れ、乾いた十市の唇が紳一郎の唇を荒々しく奪う。
「…んっ…は…あ…っ…」
十市の舌は獰猛でしなやかな野性動物のようだ。
紳一郎の柔らかな舌や口内や唇全てを食い尽くすかのように奪い…そして快楽の火を点けてゆく。
「…したい…十市…」
くちづけにより欲望の炎を灯された下肢を十市のそれに絡める。
「…坊ちゃん…!」
…それは十市も同様だった。
紳一郎のそれを遥かに超える硬く熱く昂った牡の像を押し付けられる。
「…十市…」
唾液に濡れた紳一郎の紅い唇を、堪らなそうになぞりながら
「…今日は…だめです…」
絞り出すように言った。
「どうして?」
怪訝そうに、眉を顰める紳一郎に
「そんなに毎晩、俺のところに来たら…旦那様が心配されます…」
諭すように答える。
「…でも…父様は今夜もお帰りにならないし…」
…分からなければいいじゃないか…。
そう言おうとした紳一郎の胸の内を察したかのように
「旦那様がいなくても、駄目です。…坊ちゃんは優秀な学生なんだから勉強や…他にもしなくてはいけないことがあるから…。俺は坊ちゃんの邪魔はしたくないんです」
静かに…しかしきっぱりと答えられ、紳一郎は口を噤む。
…十市は、僕の為に気を使ってくれているんだ。
そんな武骨な優しさが紳一郎は好きだった。
「…分かったよ。今日は泊まらない。…でも、小屋でお茶くらい飲んで行ってもいいだろう?」
上目遣いで見上げると、陽に透けてアメジスト色の瞳が優しく微笑った。
「もちろんです」
二人が再び熱く抱き合い、くちづけを交わそうとした時…林の奥から馬の蹄の軽やかな音が近づいて来た。
冬の間は年老いた馬丁の身体を気遣い、体力仕事は十市が引き受けているからだ。
「十市!」
叫びながら駆け寄り、その胸に抱きつく。
飼葉桶を置き、十市がしっかりと紳一郎を抱きしめる。
「坊ちゃん、お帰りなさい」
低い声を聞きながら、十市の分厚い胸に貌を埋める。
いつもの安煙草と革のジャケットと…今日は乾いた飼葉の匂いがする。
…大好きな…十市の匂いだ…。
「…会いたかった…」
…昨夜、あんなに激しく愛しあったばかりなのに、もうこんなにも身体が十市を欲している…。
甘えたように潤んだ瞳で見上げる紳一郎の白い頬を十市の節くれ立った大きな手が包み込む。
「…坊ちゃん…」
少しひび割れ、乾いた十市の唇が紳一郎の唇を荒々しく奪う。
「…んっ…は…あ…っ…」
十市の舌は獰猛でしなやかな野性動物のようだ。
紳一郎の柔らかな舌や口内や唇全てを食い尽くすかのように奪い…そして快楽の火を点けてゆく。
「…したい…十市…」
くちづけにより欲望の炎を灯された下肢を十市のそれに絡める。
「…坊ちゃん…!」
…それは十市も同様だった。
紳一郎のそれを遥かに超える硬く熱く昂った牡の像を押し付けられる。
「…十市…」
唾液に濡れた紳一郎の紅い唇を、堪らなそうになぞりながら
「…今日は…だめです…」
絞り出すように言った。
「どうして?」
怪訝そうに、眉を顰める紳一郎に
「そんなに毎晩、俺のところに来たら…旦那様が心配されます…」
諭すように答える。
「…でも…父様は今夜もお帰りにならないし…」
…分からなければいいじゃないか…。
そう言おうとした紳一郎の胸の内を察したかのように
「旦那様がいなくても、駄目です。…坊ちゃんは優秀な学生なんだから勉強や…他にもしなくてはいけないことがあるから…。俺は坊ちゃんの邪魔はしたくないんです」
静かに…しかしきっぱりと答えられ、紳一郎は口を噤む。
…十市は、僕の為に気を使ってくれているんだ。
そんな武骨な優しさが紳一郎は好きだった。
「…分かったよ。今日は泊まらない。…でも、小屋でお茶くらい飲んで行ってもいいだろう?」
上目遣いで見上げると、陽に透けてアメジスト色の瞳が優しく微笑った。
「もちろんです」
二人が再び熱く抱き合い、くちづけを交わそうとした時…林の奥から馬の蹄の軽やかな音が近づいて来た。