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この前、人を拾いました
第43章 ⑤―3 草野祥平 そして 観覧車
お兄ちゃんは結婚してから隣町に引っ越してきた。
電車で40分くらい。
近いわけでも遠いわけでもない微妙な距離。
彼らが引っ越したばかりのとき一回だけ華美さんとうちに遊びに来たっきり、全く会っていなかった。
まぁ、私としては、あの暴君兄がやっと落ち着いてくれて、万々歳だったんだけど…
「なんで、ケンカしたのかなぁ」
商店街を歩きながら隣にいるレイに声をかける。
「そんなの、あいつが"兄"という愚かな生き物だからに決まっている!」
要領を得ない回答をきいて、何かお兄ちゃんの記憶から分かったことはないのだろうかと期待したことにがっかりする。
テレビを壊されたあの後、しばらく誰一人話さないという時間が続き、さすがに耐えられなくなった私は買い物に出ることにした。
そしたらレイも『僕も行くゾッ!!!』と言ってついてきた。
ちょっとは反省してほしいものだ。
テレビの怒りを拭えなかったが、『めっちゃいいテレビ今度買ってもらおう』と密かに心に決めることで自分を落ち着かせ、同行を許可した。