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この前、人を拾いました
第55章 ⑥―5 10th Birthday


礼二が事故にあった───





知らせを聞いた父は、今までに見たことがないほど慌てだし、私を連れてすぐさま病院に向かった。





弟を失うかもしれないという恐怖といつも冷静な父がガクガクと震えているのをみて、私は道中、夢であって欲しいと何度も思った。


落ち着け、と自分に言い聞かせ静かに目を瞑ると優しい母の姿が浮かんだ。






病院につくと気が動転して転びそうな父を執事たちが支えながら、礼二のところに向かった。



扉を開けると、そこにはたくさんの管に繋がれ、頭には包帯が巻かれた弟が静かに眠っていた。





「幸い命には別条はありませんが、頭をひどく強打していまして……」




まるで操り人形のような礼二の隣で医者がなにやらごちゃごちゃと言う。



父が声を殺して泣いているのを見ながら、私はまだ小さなその手を握って、ただじっと礼二を眺めた。





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