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この前、人を拾いました
第55章 ⑥―5 10th Birthday
数時間して礼二はゆっくり目を開けた。




「「礼二!!!」」


私と父は疲労でうとうとしかけていたのも忘れて、夢中で礼二の顔をのぞいた。




「俺だ!お前の兄だ!総一だ!!」



自分の声が頭の中でぐわんぐわんと響いた。



礼二はゆっくり首を俺の方に向けると



「分かるよ…」



と小さな声でポツリと言った。




良かった……


記憶喪失とかじゃなかった…。





「無事で良かった…お前は交通事故にあったんだ。」



安心したせいか、私の足はガクガクとして、その場にあるイスに倒れるようにして座った。




「本当に………本当に無事で良かった…」



さっきまで顔をずっと下げて祈るようにしていた父が、ぼろぼろと涙を流し、礼二の頬に何粒か落ちた。




礼二は首を父の方に向けると、虚ろだった目を大きく見開いて「それが……お母様ですか……」と突然言い出した。




何を言っているんだろう。




やはり頭を打った衝撃で、混乱しているのだろうか。




「礼二、私はお前の父だ。母に見えるのかな?」





父はそういいながら、少し不安そうに笑った。





「あぁ…」






小さな声で礼二は、そういうと、ゆっくり目を閉じて、そのまま眠った。




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