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この前、人を拾いました
第56章 ⑥―6 それでもやっぱり
「忙しいのに、私のためにお時間割いてくださって、ありがとうございました。」
ドアの前で私と若村さんは深く総一さんに頭をさげた。
「ハハハ。いいですよ、僕もみきさんに会いたいですから…」
「…っ!?」
さっきのしんみりとした雰囲気から一転、少し苦手ないつも総一さんに戻っていた。
「それは…あっ、ありがとうございます。では、失礼します。」
無理矢理に笑いながら再び会釈をすると、若村さんがドアを開いて私に出るように促した。
その瞬間、フワッと身体が後ろにのけぞったかと思うと、ギュッと後ろから抱き締められた。
「あっあのっっ」
「みきさん…」
耳元に甘い声で囁かれ、ぞわりと身体があわだった。
「礼二は大事な弟です。私は礼二の幸せを願っている……。でも、あなたのことだけは、私だって本気ですから…」
そう囁くと、総一さんは私の耳にチュッとわざと音がするようにキスをし、身体を離した。
なっ!?
パニックになりながら、総一さんの顔を見ると、ニコニコとして手をふっており、脇で若村さんがまた大きな溜め息をついていた。
顔はあまりレイとは似てないけど…こういう強引なところ本当にそっくりなんだからっ!!!!
「しっ、しつれいします!!」
私はこれ以上総一さんにのまれないように、早足で会議室をあとにした。