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この前、人を拾いました
第63章 ⑦―4 彼はやっぱり彼な訳で
『ちょ…レイ、なにして…』
切符売り場はこっちだよ、と言おうと思ったその瞬間、レイは突然目に見えないほどのスピードで走り出したかと思うと、
まるで改札をハードルのように、キレイなフォームで飛び越えた。
『………………。』
私だけじゃない、レイの奇行を目の当たりにしたその場の人たちは立ち止まり、目を丸くして、口をあんぐりと開けた。
『ハハハハハハハハハハ!容易い!ひなちゃんも飛び越えろ!!』
レイはそんな周りの視線に構うことなく、まるで自己新記録を出した陸上選手の如く達成感に満ちた顔を私に向けた。
ピーーーー!!!!!
言葉も出せずに、とりあえず現状把握しようとしているとどこからともなく笛の音が鳴って駅員さんが二人レイを囲んだ。
『君っ!!!!!!無賃乗車は違法だ!!!ちょっと来なさい!』
あ……なんか…すっごいめんどくさいことになりそう……
『んん!?何なんだ君たちはっ!』
強気のレイに駅員さんは顔を真っ赤にする。
『何ってそれはこっちの台詞だ!!!しかもこんなに堂々と!!!ちゃんとお金を払いなさい!!!!』
うん…おっしゃる通りだよ…
至極当然な駅員さんの怒りに私は同調してじっと眺めていた。