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飴色トライアングル【完結】
第15章 嬉しさと不安と…
最後に残った線香花火。
「どした美緒!やらないの?」
う~ん─やりたいような、やりたくないような!
線香花火って─
見てると寂しくなるっていうか…
私の中では夏の終わりのイメージが強くて
昔の最悪な夏の出来事が頭に浮かんでくる。
大きな心のキズとヒデと別れたあとの寂しさでボロボロだったあの頃
明日から私はまた1人になるんだと思うと寂しくて堪らない。
なんで今?
さっきまで心の底から花火を楽しめてたのに
嫌な事ばかり頭に浮かぶんだろう。
ダメダメ─余計な事考えちゃ。
ブンブン
頭の中のイメージを払拭するように大きく首を振った。
「美緒?どした」
ヒデが心配そうな顔で私を見る。
「なんでもないけど…線香花火はやめとく」
今日は充分楽しめたし、もういいや。
「なんで?全部やるって言わなかった?」
うん、そうなんだけど
「…えっと、ヒデが帰ったら楽しみがなくなっちゃうでしょ?」
明日帰るのに…私がおかしな事を言ったらきっとヒデは心配する。
ここは適当に誤魔化して、いつか1人でやるって事にしておこう。
沈んだ心を悟られないように今はヒデから離れよう。
「花火片付けちゃうね」
花火の入ったバケツを持ち上げようとするとヒデが私の腕を掴んできた…
「な、に?どうしたの」
「美緒……」
「…こんなの1人でやったらもっと寂しくなるぞ」
え、ヒデの言葉に動きが止まる。
私の考えてた事が分かるの?
「2人で楽しい思い出に変えよう、な?」
グスッ…
楽しい思い出に、変えられる?
そうだね!
ヒデと一緒ならいい思い出にきっと変わるよね。
「じゃ、や…る」