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愛されたいから…
第9章 藤森の作品
俺の家の鍵を持っている人は、うちの両親と大地にリッちゃん、それに編集さんでは坂口さんに南郷さんです…。確かにちょっと多いかな?

そんな事を思う俺に南郷さんが鍵を出して来て

『うちの鍵はお前にしか渡す気はないからな。』

と言って南郷さんの家の鍵を俺にくれた。俺は

『いいの?てか、俺が勝手に行って、南郷さんの家でご飯とか作ってもいいの?』

と南郷さんの部屋の鍵を握って聞いてしまう。南郷さんは俺に軽くキスしてから

『俺は帰りとか遅いけど…、イルマが来たい時に来ればいいよ。台所も好きにしろ。』

と言ってくれていた。

あぁ…、やっぱりこの人キス魔でタチが悪くて、少しヤキモチ焼きだけど、俺を想ってくれてて優しい人なんだ…

そう感じる俺は嬉しくて南郷さんに自然と笑顔を向けていた。南郷さんは俺を見て少し照れたように

『そろそろ送るよ。』

と言ってその寿司屋を出ていた。まるで女の子みたいに俺を家の前まで送ってくれる南郷さんだったけど…、俺はやっぱり女の子じゃないから、家の前まで手を繋いだり、キスをしてから別れるとか出来ない寂しさを抱えたまま、南郷さんが帰る背中を俺は見る事しか出来なかった。

そうやって少しずつだけど俺は色々と南郷さんがわかって来て、嬉しかったり寂しかったりと俺は色々と考えながら寝てしまう。

南郷さんには簡単に俺の身体は疼かされて、俺は週末まで我慢して耐えられるのか?とかそんな不安もあったけど、週末には2人きりの時間が貰える嬉しさの方が今は俺には充分満足出来る状況だった。

翌日から、俺は自分の本来の仕事である少女漫画のネームを描き始めていた。とりあえず、坂口さんが納得してくれる3話分のネーム…。

まずは主人公が高校に入学して憧れの先輩に初めて出会うエピソードから始まり、主人公が2年生になって友達と遊ぶのにはお小遣いが足りないという説明的な話しを描き上げる。その流れで主人公がバイトを決心した辺りで続くにして2話目に入る。

2話目はバイトの面接に憧れの先輩が同じバイト先に居る事を知り浮かれる主人公…。まるで今の俺が南郷さんの編集部の仕事を優先してやりたい気持ちと主人公が重なって来る。

ところどころに主人公の平凡というコンプレックスを入れながらネームは順調に描けていく。
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