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愛されたいから…
第11章 南郷の思い
そうやって混乱する俺なのに、そんな事に気付かないイルマは俺のキスに悦んだ顔を俺に見せて来る。もう一度、確認しようと俺がキスをしてやると今度はイルマが俺を離さないようにしがみついて来る。

純粋で可愛くて汚れを知らないイルマ…。だけど、その純粋さが残酷なんだと全く理解していないイルマ…。イルマは自分の周りにいる人間をただの友達だと俺に言っているけれど、彼らは俺が見る限り明らかに異常なほどにイルマを愛していると俺は感じてしまう。

そんな残酷な純粋ってやつには俺は一度懲りたはずなのに…

性懲りも無く俺はまたあの時と同じ苦しみを繰り返そうとしている。

28歳にもなって、誰よりも必死に仕事をして、やっと自分を取り戻せたというのに、俺はまた20歳の頃に溺れた純粋ってやつにもう一度溺れようとしている。

和也…、お前はまだあの頃のままなのか?

大学に行くまでは、どこか冷めていて打算的だった俺は一応、成績優秀な模範的という学生だった。身長もそこそこあったからそんな俺には向こうから寄って来る女の子も何人かいた。

一応、1人か2人は付き合って、後のレベルの低そうな女は、全部俺は断っていた。俺が女と付き合った理由はそいつが好きだとかいうよりも、未だに自分が童貞だとかくだらない事を悩むのが嫌だという考え方が強かった。

俺が付き合っている女の耳元で

『お前の全てが見たい…。』

と言えばそれだけで女は勝手にエロい顔をして自分で服を脱ぐから楽だった。だけど、それは高校までの話しで、大学では下手に好きでもない女に迂闊に俺が手を出すと女の方もちゃっかりと卒業という未来を考えていて

『私と結婚とか考えてくれる?』

とか言い出しやがる。そんな時期に、俺は俺の先輩に当たる庄司 和也に出会っていた。先輩はいわゆる問題児だった。自分の好きな事には間違いなく天才的になる人だが、それ以外はからっきしな人だった。

そんな先輩の扱いに困ったゼミの教授が俺に

『彼の面倒を見てやってくれないか?』

と押し付けて来たのがきっかけだ。
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