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愛されたいから…
第13章 南郷と大地の怒り
イルマがコイツにフラれてコイツにもう会いたくないと思っているのは事実だ。俺は自分にそう言い聞かせてこの程度の南郷の迫力に負けるわけにはいかないんだと思っていた。だから…

『そうだよ、男なんかに付きまとわれたら気持ち悪いに決まってんだろ!』

俺が噛み付くようにそう言うと目を見開いた南郷は有り得ないくらいの殺気を俺に向けて

『お前だって男のくせに…。』

と低くビンッと響く唸るような声で言うと俺を睨みつけて来ていた。お互いがただ向かい合って話しをているだけなのに、俺の首を南郷が締めているような感覚に俺は堕ちていく。

そうやって息が詰まる俺にまるで余裕を見せるようにゆっくりと息を吐いた南郷は静かに

『俺とイルマの問題に部外者が口を出すな…。』

と言ってから一方的に俺の前から立ち去っていた。

なんなんだよ…、この感じ…

15年以上、イルマと一緒に居て、誰よりもイルマを俺は愛していると思っていた。なのに、今は俺の中で突然に湧いてきた敗北という2文字が俺を苦しめ出していた。

南郷はそれほどにイルマを愛している?いや、南郷も俺と同じであのイルマに選ばれて愛されたいと思っているのだ。

だったらなんで俺よりもイルマを愛していると感情を剥き出しにした奴がなんで簡単にイルマを傷つけて泣かせたりすんだよ…

そんな腹立たしさが俺の中で渦巻くのに、俺は南郷に男として完全に負けている自分に気付かされて、その悔しさから俺はその場からしばらくは動けないままだった。

とにかくこれ以上はアイツにイルマを傷つけさせないように俺がしてやらなければならないんだ。

イルマは純粋で無邪気で世間知らずだから俺が守ってやらなければいけない存在なのだから…

南郷に負けた俺はそう思う事で自分を何とか支えていた。そう思い込まなければ俺はイルマのそばに居てやれないとか考えていた。

南郷から受けた敗北を振り払うようにして俺は仕事に向かっていた。
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