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愛されたいから…
第14章 イルマの初体験
少しずつ、本当に少しずつだったけれども南郷さんの恋人として、南郷さんに対する態度をどうすればいいのか俺は理解が出来るようになっていた。

出版社を出てから俺は南郷さんの為に買い物をして南郷さんの部屋に向かった。

南郷さんの部屋に着いた俺は

『これは…。』

と言って愕然とする羽目になっていた。その部屋は〆切前だからといってもあまりにも酷い散らかりようだった。

台所の流しにはグラスやコーヒーカップなどの汚れものが溜まり、ソファーには洗濯されたものなのか、汚れなのかすらわからない服や下着が散乱し、仕事用の机に積み上げられた本がいつ雪崩になって襲って来てもおかしくない状況だった。

そんな酷い部屋を今なら俺には平気で見せれる南郷さんなんだと自分の怒りを鎮めながら俺は掃除をして洗濯を済ませ、夕食の用意をする。

だけど今夜はなかなか南郷さんが帰って来ないから俺は段々と不安になっていた。だってもうすぐ終電の時間だったからだ。

こんな時間まで帰れないほどに南郷さんは忙しいんだと理解したら、俺はこの部屋の散らかりも怒る気にはならない。

ただ俺が南郷さんの身体とかが心配になった頃に何故かこの家のインターホンが鳴っていた。南郷さんなら自分の家なんだから勝手に入って来るはずだ。

しまった!南郷さんが帰って来るからと鍵をかけていないんだ!?

もし変な人だと困るから俺が慌てて玄関の鍵をかけようとリビングから廊下に出た瞬間、玄関の扉が開いて

『龍平、居ないのか?』

と声をかけて入って来る男の人と俺はモロに目があってしまった。厳つくてなんだか怖い系の男の人…、髪はオールバックで熊みたいにデカい!?

そんな知らない人にパニックになりかけた俺に

『うげっ!?すみません、ここは南郷さんのお宅ですよね?』

とその厳つい人も俺を見てパニックになったらしくこの部屋の表札を一生懸命に確認している。その姿がなんとなく可愛くて俺は

『ここは間違いなく南郷さんの家です。南郷さんならまだ仕事ですけれど…、上がって待たれますか?』

と聞いてみる。瞬間

『豊?何やってんの…、お前?』

と南郷さんの声がしていた。帰って来てくれたんだと俺は少しホッとした。高橋 豊さん…、彼は南郷さんの高校からの同級生らしい。
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