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愛されたいから…
第2章 イルマの思い
南郷さんの名刺を見ながら俺は初めてのその番号を自分の携帯に登録をしてから、南郷さんの携帯を鳴らしてみた。コールが1回、2回…と鳴り、何故か俺は緊張感が増していく。

コールの音が聞こえるたびに俺の心臓がドクンッと脈打ち、その緊張感から俺は電話を切って逃げたくなる自分がわかって来る。

なんで逃げる必要があるんだよ…、これは仕事の電話だぞ!

そんな馬鹿な自分に腹が立った瞬間に

『はい、南郷です。如月先生?』

と俺の好きな声が俺の耳に響いて来る。この声を聞けるだけで俺は更に動悸がして1人で馬鹿みたいに焦って来る。

『先生?』

そう聞かれた俺は

『あ…、あの、キャラ図をFAXしたので…。』

と上ずる声で必死に要件を南郷さんに説明する。そんな俺にはクスッと笑うような声が電話の向こうから聞こえたような気がした。

もしかして俺は変な奴だと思われて毎回南郷さんに笑われてるのか?いつものようにくだらないコンプレックスが俺の中にまた増える。そしてそんな自分に俺は段々と泣きそうになって来る。

だけど、これは仕事の電話なのだから俺に対してごく普通に南郷さんは

『わざわざ電話、ありがとうございます。藤森先生に確認出来次第、こちらからまた連絡しますので、GOが出たらすぐ作画にかかって頂けますか?』

と静かに言って来る。俺はその南郷さんの声が頭に響いてクラクラする。カッコいいよ…、本当に俺が欲しい声だ。

こんな声だったら女とかナンパするのに勇気が出るのかな…、こんな声なら…

色々と馬鹿な事を想像しながら俺は南郷さんに

『連絡待ってます。』

とだけ言って電話を切っていた。もっと、あの人の声が聞きたい。あの声で俺は俺の名前を呼ばれたらきっと舞い上がってしまうに違いない。リビングのソファーに転がって、そんな事を考えてしまう。

南郷さんからの次の連絡は2時間くらいして俺の携帯にかかって来た。

『藤森先生もOKなので、作画進めて下さい。』

と静かに言って来る南郷さんの声に俺はやっぱりドキドキとしながら、でも少し浮かれてその声に聞き惚れていた。とりあえず、俺はこの南郷さんとしばらく仕事が出来るんだ。

『わかりました。途中確認はされますか?』

と嬉しさで浮かれる気持ちを抱えながら俺は南郷さんに聞いていた。
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