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愛されたいから…
第16章 イルマの価値観
そうやって南郷さんとのSEXばかりを考える俺は本当はエロい恋人なんだって南郷さんにバレたら、俺は生きて行けない気がする…。

色々と考えて結局は自分に自信を無くしていく俺に南郷さんが2人っきりのエレベーターで

『帰ったら、すぐに風呂を済ませて絶対にお前を抱くからな。』

と俺の耳元に囁いてくれる。たったその一言で嬉しくて幸せになれる俺は単純だとは思うけど、俺は

『俺が寝るまで絶対に離さないで…。』

と小さく答える。南郷さんは力強く

『わかっている。』

と言ってから俺と同じように嬉しそうな顔をしてくれていた。

南郷さんが夕食にと俺を連れて行ってくれたのは、南郷さんの家の近くにあるイタリアンレストラン…、前に南郷さんの家に来た時に俺が南郷さんと来たいと思っていたお店だった。

『ここ、一度はイルマと来たいと思ってたんだ。』

そう言う南郷さんを俺はもっと好きになる。俺と同じ感覚を南郷さんが理解してくれている。それは俺にとってはかなり重要な事だ。

俺が唯と付き合っていた時、唯が行きたがる店や唯が観たがる映画、唯が好きな音楽…、全てが俺には違和感でそれは苦痛を感じる時間だった。

唯は洋服のデザイナーが夢だった。だから、流行りの服を着て流行りのメイクをして流行りの歌を聞き、流行りの店で食事をしたがる女だった。

いわゆるミーハータイプだと一度街でバッタリ出会ったリッちゃんはそんな唯を馬鹿にしていた。

流行りとかについて行けない俺は結局唯には違和感だらけで、そんな違和感を俺に全く感じさせない南郷さんが俺はやっぱり好きだとか考えてしまう。

こじんまりとしたお洒落なイタリアンレストランは温もりを感じる手書きのメニューで、一般的には知られていない少し凝った料理の名前はメニューに美味しそうな写真が貼られていた。

生ハムのサラダ、エビのカルパッチョ、ラタトゥイユにピザを頼んで俺は南郷さんとの食事を楽しむ。食事をしながら

『クリスマスは多分仕事で最悪だ。』

と子供みたいに嘆く南郷さんに俺は笑ってしまう。年末や年始はどこも出版社関係はパーティーばかりで忙しくなる時期だ。
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