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愛されたいから…
第16章 イルマの価値観
しかも、出版社主催の場合はその出版社の編集部の人はパーティー準備で駆けずり回り、先生方の付き人のように接して気を使うからそのパーティーが大変なのは俺は充分に知っている。

『招待状、来てたから…、今年は俺も行こうかな?』

と俺は南郷さんに言ってみる。いつもはそういう華やかな場所には俺は行かないけれど、今年は南郷さんが居るから行ってみたいとか思ってしまう。

『来て貰わないと俺の立場が困るぞ。』

『なんで?』

『招待状、ちゃんと見たか?出版社の名前の下にガンマ編集部ってなってたはずだ。』

ああ…、今は俺と藤森先生がガンマでのトップ作者だから、編集長としては俺が行かないと南郷さんは会社での立場として困るんだ…。

『仕事だから来て欲しいの?』

『1分でも顔が見たいからに決まってんだろ?』

いつもちゃんと俺が欲しい言葉をそうやって南郷さんは俺にくれる。2人でそんな会話をしていると

『イルマ!?』

と知らない女の人に俺は声をかけられた。

誰だろ?

と俺は一瞬思っていた。地味な普通のOLが2人で食事に来ましたという雰囲気で俺と南郷さんの隣のテーブルに座って俺の名前を呼ぶ…。

『唯か?』

俺が思わずそう聞いてしまうほど、ミーハーで派手だった唯がかなり地味になっていた。

唯は驚く俺を見てから

『イルマはあんまり変わってないのね?』

と懐かしそうな顔をする。確か、唯はデザイナーが目標だったのに、この地味なOL姿はなんなんだ?

そんな事くらいしか俺は唯には感じない。南郷さんが

『知り合いか?』

と聞くから俺は

『大学の同期です。』

とだけ答える。俺と南郷さんはもう食事が終わる頃だったから南郷さんが俺に

『そろそろ帰ろうか?』

と言って席を立っていた。俺も一緒に席を立とうとすると俺に唯が

『ごめん、イルマ、5分だけ話しをさせて…。』

と言って来た。南郷さんは俺と唯に気を使って

『先に行ってる。』

と支払いを済ませてから先に店を出ていた。
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