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愛されたいから…
第1章 イルマの出会い
そのお陰で俺の描いた作品はデビューの時から新人とは思えないという定評を貰い、現在に至るまで何とか食うには困らない程度には仕事をさせて貰えている。

だが、漫画家というのは上手く絵が描ければいいというだけの職業じゃない。そこがまず俺のコンプレックスが増えていく部分だ。漫画家としての今の俺の担当編集者、坂口さんがこの打ち合わせで俺に

『出来ないって言われても、うちとしてもこれ以上は困るんですよ。』

とため息をついて来る。わかっている…、わかっているんだけど…、出来ないものは出来ないんだよ。本当は坂口さんにそう言い返したい言葉をそんな情けない自分が嫌だからと飲み込んでしまう。

ならば何が出来ないのか?それはこれが次の連載についての打ち合わせだって事だ。そして、これが俺のコンプレックスの1つである。

いや、正確には俺のコンプレックスが原因でそれが出来ないからと更にコンプレックスが増えているという悪循環な状況なのが正解だと思ってしまう。

まず、俺の人生最大のコンプレックスは自分の顔と身体から始まっているのだ。不規則な生活を送る親のせいなのか…、それともそもそもの遺伝のせいなのか…、男だというのに身長は160cmしかなく、体重は48kgとちょっとした女子並みの体型に、挙げ句にこの女みたいな憎むべき顔に生まれてしまった。

目は大きな2重、鼻も口もやや小さめで、今までの人生の中で日に焼ける事なんかして来なかった俺は、そこいらの女性よりも白く透けるような肌になった。

そんな俺のもち肌をお袋がよく撫でながら

『赤ちゃんのお肌が大人になっても続けられるって女性にとっては羨ましい事なのよ。』

とか言って来る。だけど俺は男なのだから、そんな褒め言葉は全く嬉しいとか思えない。むしろ、それは俺のコンプレックスを増幅させるだけの虚しい言葉にしかならなかった。

そしてこの顔と身体のお陰で、学生時代は通学のバスや電車では何故か何度も迷惑な痴漢という人々に出会い、一番最悪な思い出としては小学生の頃に変なお兄さんに拐われそうになったという異常な経験までをさせられている。
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