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愛されたいから…
第5章 律子の思い
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なんであんなに幸せそうな顔をイッちゃんはあの人にしか見せてくれないの…?

ただ物分りのいい幼なじみをイッちゃんの前で私は演じ続けるしかないとか、涙も出て来ないよ…

『イッちゃんのバーカ…。』

イッちゃんの家を出て歩きながら、私はそう呟いてしまっていた。だって今のイッちゃんは自分の初恋に夢中だもの。ずっと一緒居た私の事なんかこれっぽっちも見てくれない。ずっとイッちゃんが好きでイッちゃんしか見てない私なのにそんな私にイッちゃんは全く気付いてなんかくれないもの。

私がイッちゃんのお嫁さんになるんだって小さい時から言って来た私だから、未だにイッちゃんは私が小さい時のままの冗談を言っているんだとしか思ってくれない。

だから私のそんな気持ちは絶対にイッちゃんには届かない…、それより、私が愛したイッちゃんは今は男に夢中とかとんでもない恋を始めちゃっている。

イッちゃんなんか報われない恋に泣けばいいんだ…

そんな意地悪を考えちゃう私って最低だ。そうやってイライラするから私は大地に電話をかけてやる。何故なら私は知っている…、大地は男のくせにイッちゃんが好きなんだ。

私と同じで、大地もイッちゃんにはずっと片思いしているもの。だから、私だけが不幸になるのは嫌だから大地にも私と同じ思いをさせてやるんだ。

そう思って私は大地の携帯に自分の携帯から電話をかけていた。今は多分大地は普通に仕事中の時間だ。

3回ほどコールすると

『はい、戸田です。ロケ中なのでご要件は録音して下さい。折り返しかけ直します。ピー…。』

『何、生意気に留守電とかしてんのよ!馬鹿大地。イッちゃんからの電話ならすぐに出るくせに!』

そう留守電に私は叫んで電話を切る。

世の中って絶対に不公平だ。私が好きになった男は男のくせに女の私より可愛いとか…、私が先に好きになったのに…、女の私にじゃなくてカッコいい男に夢中だとか…、あぁ…、不公平なのは世の中じゃなくてイッちゃんかぁ…。

そんな事をぼんやりと考えながら私はイッちゃんの家の近くの駅前通りを歩いて行く。自分の家には帰りたくない…、でもイッちゃんはあの人と今はラブラブの時間だから私が居たら、いつかイッちゃんは邪魔な私を避けるようになっちゃうかもしれない。
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