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愛されたいから…
第1章 イルマの出会い

この怒鳴り声にはさすがに編集部の坂口さんが
『何事だ?』
と打ち合わせ用の小部屋の仕切りになっているパーテーションの上から編集部の方を覗いた。俺も何故かそんな坂口さんに釣られるようになんとなく覗いてみた。
少女漫画の編集部の一番奥のデスクに机を覆うように手をついた男が編集長に何かを喚いている。いや、喚くと言っても低い響く声だから、説得力を感じさせる言い分に聞こえてしまう。男に対して困った顔をする編集長が
『いきなりそう言われてもねぇ…、うちの先生方にも都合ってのがあるし、打ち切り寸前の先生とかは今はうちにはいないのよねぇ…。』
とその男に答えた。男は
『わかっている。それでも、仕事が欲しい新人とか、持ち込みの奴とか、誰かしら居るだろう?』
とさっきよりも少しは落ち着きのある声で編集長に向かってまだ食い下がるように言う。その状況を覗いていた坂口さんに向かって突然、編集長が
『坂口君、打ち合わせは終わったの?もう終わったのなら、ちょっと南郷さんに協力してあげてよ。』
と言って来た。今度は坂口さんが
『打ち合わせ…、終わったとかいうか、また如月先生が無理だって言うから進まないんですよ。』
と困った顔を俺に向けながら編集長に言った。ここの編集長は丁度俺のお袋くらいの年代の女性だ。そんなお袋みたいな編集長が
『如月先生…、またですか?』
と再び困った顔になり俺に向かって聞いて来る。なのに俺は何故か編集長の前に仁王立ちしたままの男の背中に目が釘付けにされた。
広い肩、広い背中、無駄な贅肉がないのに、がっちりとしたその身体はまさに男の中の男を貧弱な俺に感じさせている。
そしてその立派な男がゆっくりと
『如月先生?』
と俺の方へと振り返って聞いて来た。俺が初めて見る彼は縁なし眼鏡に少し伸びた前髪がかかっていた。だけどそのメガネの奥の切れ長な鋭い目が彼の綺麗な整った顔を強調しているが、俺とは違い全く女を感じさせていないという人だった。
『何事だ?』
と打ち合わせ用の小部屋の仕切りになっているパーテーションの上から編集部の方を覗いた。俺も何故かそんな坂口さんに釣られるようになんとなく覗いてみた。
少女漫画の編集部の一番奥のデスクに机を覆うように手をついた男が編集長に何かを喚いている。いや、喚くと言っても低い響く声だから、説得力を感じさせる言い分に聞こえてしまう。男に対して困った顔をする編集長が
『いきなりそう言われてもねぇ…、うちの先生方にも都合ってのがあるし、打ち切り寸前の先生とかは今はうちにはいないのよねぇ…。』
とその男に答えた。男は
『わかっている。それでも、仕事が欲しい新人とか、持ち込みの奴とか、誰かしら居るだろう?』
とさっきよりも少しは落ち着きのある声で編集長に向かってまだ食い下がるように言う。その状況を覗いていた坂口さんに向かって突然、編集長が
『坂口君、打ち合わせは終わったの?もう終わったのなら、ちょっと南郷さんに協力してあげてよ。』
と言って来た。今度は坂口さんが
『打ち合わせ…、終わったとかいうか、また如月先生が無理だって言うから進まないんですよ。』
と困った顔を俺に向けながら編集長に言った。ここの編集長は丁度俺のお袋くらいの年代の女性だ。そんなお袋みたいな編集長が
『如月先生…、またですか?』
と再び困った顔になり俺に向かって聞いて来る。なのに俺は何故か編集長の前に仁王立ちしたままの男の背中に目が釘付けにされた。
広い肩、広い背中、無駄な贅肉がないのに、がっちりとしたその身体はまさに男の中の男を貧弱な俺に感じさせている。
そしてその立派な男がゆっくりと
『如月先生?』
と俺の方へと振り返って聞いて来た。俺が初めて見る彼は縁なし眼鏡に少し伸びた前髪がかかっていた。だけどそのメガネの奥の切れ長な鋭い目が彼の綺麗な整った顔を強調しているが、俺とは違い全く女を感じさせていないという人だった。

