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愛されたいから…
第1章 イルマの出会い
まさに俺がなりたいと思い続けた俺の理想の男がそこに立っていた。編集長の言葉に坂口さんが打ち合わせの小部屋から出て編集長の前へと行くから俺も何故か坂口さんについて行くようにして編集長の前に行ってしまった。

今、俺の目の前には俺の理想の男が立っている。何故かそれだけで頭がいっぱいになって心臓がドキドキとして来る。いざ俺が彼と並ぶと彼の身長は180cmはあるとわかるくらいに大きく感じる。そんな彼の黒のポロシャツから出た腕はスラリと長く軽く俺の倍はある太さだ。

そうやってしっかりと男を感じさせる彼は整った眉や綺麗な肌をしていて髭とかそんなものは全く感じさせないのに俺とは違い女性的にも全く感じさせてはいない。

あぁ…、神様は不公平だ…

コンプレックスばかりの俺は彼を見ながらそんな事をぼんやりと考えてしまう。仕事にはシビアな編集長が俺に向かって

『如月先生、そろそろ本当に連載して貰わないと来期は短期契約しか出来なくなりますよ。』

と言って来た。さすがにその編集長の言葉に我に返って

『わかってます。でも、俺は短期の方がいいかもしれません。』

とやはりいじけるように答えた。そんな俺に

『男だったのか…?』

と俺の理想の男が呟くように言った。その言葉にはまたしてもコンプレックスを感じて凹んでしまいそうになった。よりもよって自分の理想とする男から自分が一瞬でも女に見られていたとか、ショックで立ち直れそうにない。

『南郷さん、如月先生に失礼よ。彼はうちのガンマ編集部の編集長の南郷さん。こちらはうちで契約している如月 るい先生よ。』

と編集長が俺を俺の理想の男、南郷さんに紹介してくれた。南郷さんは俺に向けて

『如月先生の作品なら知っている。あれだけ繊細な絵を描く人だから、てっきり女性作家だと思ってて、すみません。』

と頭を軽く下げて来た。そんな南郷さんの綺麗な癖のないサラサラの髪がまたしても羨ましくなって来てしまう。何故なら俺の髪はフワフワとして柔らかい赤ちゃん毛だからだ。
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