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愛されたいから…
第6章 大地の思い
日頃から運動不足のイルマは俺よりも遥かに体力がない。俺はカメラマンだからカメラを担いで何処でも行くのが仕事だから、ちょっとした荷物なんか全然平気だが、イルマはペンよりも重い物を持つ仕事なんかした事ない奴だ。

だが、俺があまり過保護になるとイルマは嫌がるから俺はイルマの好きにさせていた。本当に辛くなって来るとどうせイルマの方から俺に甘えて来るからだ。

新宿でロマンスカーに乗ってから俺はイルマを窓側に座らせていた。発車まではイルマが目をキラキラさせて窓の外を子供みたいに見ていた。

俺はイルマの為にロマンスカー名物の弁当を予約していた。発車の30分前までに予約をすれば弁当が座席まで持って来て貰えるというサービス付きの弁当だ。

配達された弁当を貰ったイルマが

『これが楽しみで、朝ご飯抜いて来たんだ。』

と言ってから駅弁をデジカメで撮影しまくった後は機嫌良く駅弁を食べ始めていた。イルマがいつもよりも大人しかったのは朝飯抜きだったからかと俺は少しホッとしていた。

弁当を食うイルマが頬に米粒を付けてたから俺はいつものように取ってやるつもりでイルマの顔に触れていた。なのにイルマが真っ赤な顔になり俺の手から突然逃げるようにしていた。

こんな事は初めてだった。あのイルマが俺から逃げるとか…、絶対に有り得ねぇ…。

狼狽えそうになる俺はイルマに

『律子となんかあったのか?』

と思わず聞いていた。イルマは

『リッちゃんの話しはしたくない。しばらくリッちゃんとは絶交する。』

と言って拗ねた子供みたいに膨れっ面を俺にして来ていた。俺はゆっくりと確認をするように

『それはお前の恋人の件と関係があるのか?』

とイルマに言っていた。イルマは真っ赤な顔で

『リッちゃんとなんか話したの!?』

と完全に狼狽えた顔で俺に聞いて来た。

『一昨日の夜にちょっと律子と会ったよ。イルマが俺と旅行したくないとか…、彼氏が出来たとか言ってたけどな。』

『か、彼氏って…。』

『違うのか?もし違うなら、俺から律子を叱っておいてやるよ。』

『叱らなくて…、いい…。』

段々と自信を失くしたようなイルマが小さくなって言葉をフェイドアウトしていた。だけど耳まで真っ赤にしたイルマが俺の知らない誰かの事を考えているのだけは俺にはわかっていた。
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