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愛されたいから…
第6章 大地の思い
大地が俺の為にと用意してくれていた旅館はかなり大きな老舗の立派な旅館だった。

『なんか…、すげー…。』

その格式に圧倒されてしまった俺に大地が小声で

『テレビ局の名前出したら、格安でサービスがいいんだよ。』

と笑って教えてくれる。荷物だけを旅館に預けてからさっそく俺と大地は箱根観光をしていた。箱根湯本…、基本的なお寺や神社、歴史資料館を観光して、俺の目当てはやはりメインの温泉だ。

『デジカメ、旅館の温泉に持って入っても大丈夫かな?』

と俺は不安になって大地に聞いてみる。大地は

『一応、旅館側には如月先生が取材したいって事は伝えてあるけど、入る前にもう一度言っておいた方がいいぜ。』

と言っていた。そうやって大地と温泉街を散歩するように歩いているとちょっとした土産物屋さんで寄木細工の小箱に俺は目が行った。大地が

『買うのか?』

と聞いて来るから俺は

『自分の原稿を置くための奴と、リッちゃんに1個買ってやる。』

と答えていた。大地は笑って

『あのお嬢様とは絶交じゃなかったのか?』

と結局、アッサリとリッちゃんを許している俺に呆れていた。南郷さんのお土産にもペンケースになる小箱を買って、自分の分とリッちゃんの分は宅急便にして送る事にしてから、南郷さんの分だけは自分で持っていた。

これは帰る時に自分で南郷さんに届けたい。そんな気持ちに俺はワクワクしながら俺と大地は旅館に戻っていた。旅館で女将さんにデジカメの撮影の許可を貰ってから、浴衣を用意して貰っていた。

男物の浴衣は貧弱な身体の俺にはブカブカのサイズだった。筋肉ムキムキの大地は逆に袖とかが短くて

『ちくしょう~…。』

と俺は大地が羨ましくてボヤいてしまう。大地はゲラゲラと笑いながら

『ちょっとはジムとかで身体を鍛えろよ。』

とか言って来る。大地みたいな筋肉ムキムキの俺が南郷さんに抱かれるとかちょっと想像が出来なくて

『俺はこれでいいんだよ。』

と珍しく俺はそんな貧弱な身体に開き直っていた。だって南郷さんが満足さえしてくれたら俺はそれでいいんだ。自分のコンプレックスがそうやって少しでも消えていくのが嬉しくて幸せで、俺は勝手に南郷さんの事ばかりを考えてしまっていた。
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