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愛されたいから…
第9章 藤森の作品
藤森先生は綺麗な顔をくしゃくしゃにして

『あの人、仕事にしか興味ないようなストイックをしてるけど、ベッドじゃ絶対にガッツリするタイプだもの。絶対にストレートじゃないわよ。』

と言いケラケラと笑い出していた。ベッドでガッツリとか…、それをされるのは俺なんだ…、そう思うと一気に俺は顔が熱くなって来る。

赤くなる俺に藤森先生はサラッと

『如月先生って、随分ウブなのね?あんなにエロ可愛く作画する先生だから、私はもっと女慣れした男の人か、本物の女の子だと思っていたわ。』

と言って来る。

『なんで女の子だと?』

『女の子本人なら、作画で微妙なシーンとか自分でオナって描くとか出来るじゃない?私の元カレなんか男しか知らないからエロいシーンを作画する時にそういうのに結構苦労してたもの。』

と言う藤森先生のストレートで露骨な表現に俺はますます赤くなる。話題を変えようと俺は

『なんで漫画家に?』

と聞いてみた。藤森先生は少し伏せ目がちにして穏やかな顔で

『私、この近くでバーをやってんのよ。だけどこの不景気でしょ?ちょっとしたお小遣い稼ぎにお客様の体験談とかストーリーにして彼氏が元漫研だからって作画して新人賞とやらに応募したのがきっかけよ。』

と俺に教えてくれていた。

だけど、そこから一気に藤森先生は豹変してカッと目を剥き出すように見開いて

『なのにさぁ!デビューが決まった途端にあのヤキモチ焼きの元カレが「俺と漫画のどっちが大事だ?」とか言い出して、南郷さんにもヤキモチ焼いて暴れたりするもんだから、2度と私の前には出て来んなって別れちゃった訳よ!』

と俺に激怒しながら詰め寄って来る。

マジで…、この人、迫力があって怖いんですけど…

そう思う俺が半泣きになりかけた頃、やっと南郷さんが戻って来て笑いながら

『藤森先生、外まで先生の声が聞こえてましたよ。』

と激怒する藤森先生を宥めてくれる。藤森先生は

『あら!?ごめんなさい。如月先生があんまりにも可愛いから、私ちょっと呑み過ぎたみたい。』

と俺に頭を下げて来る。南郷さんは

『如月先生はお酒の席には慣れてないんですから、ほどほどにしてあげて下さいね。』

と藤森先生に言っていた。
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