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八重の思いー私を愛した2人の彼氏
第11章 忍び寄る過去の影-千弥の決断
それを九鬼に見られ手を回された、私はそう思う。
向こうからは近寄れない、でも私から近寄るのは制限されないし、それで前の二の舞になっても私が悪いことになる。……どこまで計算ずくなのよ!
「……断れないと仰るんでしたら、私がこの会社を辞めます。その上で先方とお話をして下さい」
「三苑君!?
……それでいいのか? せっかく掴んだキャリアを棒に振ることになるんだぞ」
「構いません。今この場で退職届を書きますか? それとも定時までに上げますか?」
「……そこまでこの話が嫌か」
「はい。こればかりは曲げません。課長、お世話になりました」
「ち、ちょっと三苑さん!?」
「小野寺さんには申し訳ないとは思います。でも九鬼……九龍湊がクライアントの仕事だけは絶対に受けれません」
「今九鬼って……まさか……」
「そのまさかですから」
陸さんは気づいたようだけど、私はなにも言わない課長に一礼し、自分のデスクに戻り白紙を1枚取り出した。
(人形に戻されるくらいなら……退職でもキャリアを潰されても構わない。二度と九鬼には関わりたくないの、前に戻るのが嫌なの)
退職届を書きながら、久し振りに薬が必要かななんて考える私。漸く静まった心をかき乱すには、今ので十分なインパクトがあった。
終わって、蓮さんと陸さんとで平和に生活していたのに、どうしてそれを壊すようなことをするの? もう私のことは諦めたんじゃなかったの? 激しく揺れる私の心、九鬼によってまた壊されそうとされている私の心……それが堪らなく嫌。