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八重の思いー私を愛した2人の彼氏
第11章 忍び寄る過去の影-千弥の決断
本当に走るようにマンションに帰って来た私。今日は蓮さんは居らず、リビングを突っ切り部屋に入ってまずすることは、クローゼットを開けること。
奥にある薬たちを見ながら、今日だけは許して明日は飲まないからと自分に言い聞かせ、一番強い薬を掴んだ。
「そう、ミネラルウォーターが無かったんだよね」
薬を止めると決めてから、買わなくなったミネラルウォーター、当然予備なんて物はなくて、仕方なくキッチンの水道から水を飲もうとフラフラと歩く私。
コップに水を注ぎ、薬を口に含んで水を飲めば……ほら、少しは楽になっていくでしょう?
「……千弥? どうしたんだい?」
「……あ」
タイミングが悪く、蓮さんが帰宅して来たの。私はまだ薬が入っていた空のフィルムを持ったまま。それを不振に思った蓮さんが私に近づいて、握っている手を開かされる。
「なにか……あったんだね」
「……仕事辞めちゃった。だってあの男がクライアントとして私を指名して来たから」
「あの男……九鬼?」
私はコクンと1つ頷く。ドンドン薬が効いてきているから、意識が朦朧としているのもあるよ。
「二度と会いたくなんて……ない。また人形にされるなんて……嫌。今の生活を捨ててでも、私は九鬼から逃げなくちゃ……ダメなの……」
「だったらずっとここに居れば良いよ。そんな男などに千弥を触れさせない、俺が陸が守るから」
「……でも……」
「大丈夫。この家は千弥が心配することなんて1つも無いからね」