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八重の思いー私を愛した2人の彼氏
第11章 忍び寄る過去の影-千弥の決断
「そう指名。九龍湊というホストで、oceanって名前のホストクラブのオーナー。
少し聞き込んで来たんだけど、うちの社長の奥様がその九龍湊ってホストにお熱らしく、この新店舗の話も社長の奥様が押したらしいって。
その際に、コーディネーターを僕と千弥に指名した。千弥はすぐに気づいたみたいで、課長に断れませんかと聞いたんだけど、社長の手前課長が難色を示し……そうしたら千弥は会社を辞めると、退社までに退職届を課長に提出していったんだ」
「ではその九龍湊という男が九鬼湊也」
「千弥は一瞬だけ九鬼の名前を出したから、それで当たり」
千弥本人に手を出せないから周りから攻める、本当に嫌なやり方だ。そして断れないからと、仕事を辞める選択をした千弥。確かに千弥の選択は正しい。
「そのバカな九鬼一人のせいで、どれだけの人が被害にあっているのか、考えただけでも嫌な気分だよ」
「僕も社内で聞き回って同じことを思った。社長の奥様? ふざけんなって」
裁判で千弥への接近を禁止されている九鬼は、自分からは千弥に近寄れない。だからと言って他人を巻き込み、千弥をおびき寄せる方法を取っていいのか?
九鬼と接点が繋がっただけで、千弥はこの状態というのに、どこまで振り回せば九鬼という男は気が済むのだろう。考えただけでも反吐が出る。
「とにかく千弥を安定させるのが先だね。会社のほうには退職届を叩き付けているのだから、簡単には手を出せないよ」
「うん、それは蓮の言う通りだと僕も思う」