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八重の思いー私を愛した2人の彼氏
第11章 忍び寄る過去の影-千弥の決断

「あんな会社でも、コンスタントに受注があるからね、自分の腕を磨くにはまだ居る必要があるんだよ」
「陸にも言ったよね、俺と一緒に仕事をしないかと」
「それだと、レストランのような食に関する店ばかりになってしまうから。僕はもっと多種の空間をやりたいんだ。でも、どうしてもダメ会社だと判断したら、蓮を頼るかも?」
「……気長に待っているよ」

深々と眠る千弥を見つめながら、いつかまた三人で組んで仕事がしたいと思う。
今はムリでもいつか……。


◇◇◇
(嫌っ! 来ないで! もう嫌なの! 人形のように壊されるのは嫌っ!!)

真っ暗な道をひたすら走る私。でも後にピッタリと張り付くように追い掛けて来る、九鬼の姿が離れてくれない。

逃げなきゃ、逃げなきゃ! 逃げなきゃ!!

私が思うのは、これただ1つ。逃げなければ捕まり、私はまたあの鍵付きの部屋に閉じ込められ、九鬼の好きなように遊ばれてしまう。その先に見えるのは、あの頃の壊れた私。
性的なことしか考えない愚かな私の姿……ほら、走っている間にも、横を見れば九鬼にされた躾の数々が浮かび上がって来るの。

(嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌、嫌)

頭をめぐるのは『嫌』の一文字だけ。
好きであんなになったんじゃないのに、捕まり拘束され九鬼に逆らえなかっただけなのに、闇に映る私はそれを喜んで受け入れてる、自分から九鬼に懇願している。……それが堪らなく嫌なのっ!!

深い深い闇の中、そこは私がたどり着いた唯一の安全な場所。そう、もう一人の私に任せ、本当の私が逃げ込んだ場所。またここに来ることになるなんて……。

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