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この香りで……。
第13章 化粧直し
 遠くでコーヒーの香りがした。先程の里井の唇が蘇る。身体が熱くなった。

 ――少しだけ……。

 奈々葉は膝の辺りまでショーツを下ろした。そのクロッチに小さな円状に粘りが滲んでいる。

 奈々葉は壁に手をついて身体をくの字に曲げて、泥濘みの中心に指を這わせた。

 指にテロンとしたモノが絡みつく。

 ――凄い……。

 指先に粘りが絡む。ハチミツを掬う時のように……。

「あ……んっ……」

 後ろのほうから前の方へ指を滑らせる。くちゅ、という粘り気の音と共に甘美な感覚が広がる。

 手洗いの入り口の辺りで、何名かの声が聞こえる。奈々葉はガラガラとトイレットペーパーを引き出して、指先を拭う。サニタリーポットの蓋を開いてそれを捨てた。
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