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一夜だけの恋人 〜妹の姫初め
第1章 プロローグ
「ふう……」
少しだけ開いた妹の夏芽(ナツメ)の部屋を覗いた。ベッドに腰掛けた彼女はぼんやりと二階の窓から見える風景を眺めている。明日は結婚式だと言うのに……。
寂しいはずだ。二十九年間も過ごしたこの部屋から出てゆくのだから……。
「よお! 荷物、全部詰めたのか?」
「……うん、詰めた……」
「忘れ物……すんなよ……引越し屋、三時くらいにくるそうだから……」
「……うん、大丈夫……」
いつもなら、「変態っ」という言葉とともにクッションや枕が飛んできたのだが、今日は彼女のため息が聞こえてくるだけだ。
彼女の部屋に入る。