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一夜だけの恋人 〜妹の姫初め
第1章 プロローグ
こんなに堂々と妹の部屋に入るなんて中一の夏までだったような気がする。
部屋を見渡す。
ぬいぐるみとクッションでピンク一色だった彼女の部屋には、もう荷造りの段ボール箱がところ狭しと積まれて、殺風景な部屋に変わっていた。
涙雨と言うのだろうか、一月の終わりだと言うのに雨が続いている。妹の複雑な心を表しているようだ。室内の暖房のせいで窓ガラスにできた露が涙のように滑り落ちた。
扉の右下の土壁が凹んでいる。夏芽が中三の頃、夏芽と喧嘩した時の俺のつま先の跡だ。あの後、つま先が痛いのを我慢していたら足の親指にヒビが入って、松葉杖の生活が続いた。俺の苦い思い出だ。
「なあ、夏芽……」
声が出なかった。いや、出なかったというよりなんと声をかけていいのか分からなかった。