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第10章 絆

俺は結城に美奈を打ちっぱなしに連れて行くように指示をした。とりあえずスィングに問題がないのなら少し練習すればなんとかなる。

問題なのはやはり美奈の体力だ。まだ１ホールだというのに美奈は全力疾走したかのように息切れをしている。相当体力のない美奈だ。

しかもなんでゴルフなんだとブツブツと不平をもらしながら俺を見る美奈。

そんな美奈が昼飯にはニコニコとしてご機嫌になりやがる。呆れて俺は

『飯の時は嬉しそうだな？』

と言ってやる。美奈は

『だって…、一緒に食べてくれる人がいるから。』

と答えた。

ああ…、そうだよな。

と俺は納得をした。美奈はなんでも全てが適当ってわけではない。１人で食べる飯だから適当になるが美奈が俺の為に作った飯は決して適当ではなかった。

誰かが居れば美奈はちゃんとしようと努力はする。そんな美奈に

『一緒に居てやるから、しっかり食えよ。』

と俺は言った。美奈は嬉しそうにやっぱりニコニコとして飯を食った。飯の間、俺は美奈について考えてしまう。

美奈が普通の女と違うと感じるのは美奈の基準が違うからだ。高い安いや美味い不味いよりも誰と何の為にその飯を食うかが美奈の基準なのだ。

多分、それは物に対しても同じだ。貰った物よりも美奈の基準は誰になんの為にそれを貰ったかが重要な基準なんだ。ある意味、美奈は手のかかる女なんだと俺はなんとなく理解をした。

午後も美奈のゴルフの腕前は酷くなるだけだった。体力がないからバテて更に酷くなる。今日はもうダメだなと俺は笑うしかなかった。

ゴルフが終わってからも美奈は口を尖らせて何故ゴルフかと俺に食下がった。俺はクソ親父の呼び出しがゴルフだとだけは説明をしてやったが結局は美奈には疑問が残っただけだ。

その日の夜は美奈はやはりバテていた。翌日に俺の部屋に帰ってから俺はもう明日から仕事だと美奈に言ったが美奈はまだ日曜日だからこの部屋に泊まりたいと言い出した。

とりあえず俺は泊まる事は許可をして寝たが朝は俺が起きても美奈は起きない。やはり体力のない美奈は疲れ切っている。

俺は結城に10時くらいに美奈に連絡をしろと指示だけを出してから会社に佐伯と向かった。