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第10章 絆

俺はそれを認めるしかなかった。今はただもう少し時間が欲しいと俺はそれしか考える事が出来なかった。

俺は佐伯に

『昼飯を食ったら今日は帰ろう。』

と俺は言った。結城からは美奈を無事に家に帰したと連絡が来た。結城には明日からは美奈のバイトのスケジュールで動けとだけ指示を出す。

佐伯と飯を食ってから帰ると美奈はもう俺の部屋には居ない。まずはケジメだけは美奈にきっちりと付けて俺は信頼を作らないと水原のクソ親父の話しなんか美奈に出来るわけがない。

だから俺は仕事は仕事、美奈は美奈ときちんと分けて考える事にした。

夕方までを寝てから俺は１人で前に美奈を連れて行った焼き鳥屋に行った。マスターが俺に

『今日は１人？』

と聞いて来る。俺はマスターに

『また連れて来ると思う。』

とだけ答えた。マスターは俺に笑顔だけ見せると黙って俺の前に飯を出してくれた。だから俺は１人だと適当になってしまう美奈の気持ちがわかる。

あいつ、ちゃんと飯を食っているのか？

となんとなく俺は思った。

翌朝は会社で秘書の秋元が俺に今日のスケジュール表を見せて来た。俺は秋元に

『今日から来るバイトの監督は秋元に任せる。場合によっては来年の就職希望者だから別に特別な扱いは必要ない。ただ飯だけは俺と同じ物にしてくれ。』

とスケジュール表の確認をしながら指示を出す。秋元は

『承知しました。』

と無駄な事は一切言わない。秋元には俺は俺の仕事の邪魔はするなと、昔、ある一件で叱った事があった。

それ以来、秋元は俺に対して仕事では全くミスもなく完璧にやり遂げる。

そういう意味では秋元はかなりの信頼性が高い秘書だ。その日は俺は朝からある会社に出向く必要があった。同じ御剣グループ内の会社で商社をやっている会社だ。

今日は御剣の親父が東京からそこに来ているから顔を出せと俺に指示が来ていた。だから俺は佐伯とその会社に向かった。

昼飯には会社に戻れるだろうと俺は思っていたが御剣の親父と会った途端に現場の良二から俺に連絡が来た。それは現場でトラブルの発生の知らせだった。