この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
秘密のピアノレッスン
第16章 呪縛から

処置が終わり、息子先生が後片付けをしている間に、先生がぽつりと教えてくれた。
「……更紗ちゃん。この人、ゆいちゃんのパパだよ」
「え!? ゆいちゃんの!」
驚くのも失礼なのだが、風貌が違いすぎて声を上げてしまった。
ゆいちゃんは完全にお母様似のようだ。
「うちのゆいとお知り合い?」
息子先生はにこにこ笑いながら、座っている椅子の背にギっと体重を掛けている。
「あ、はい。クリスマス会で話しただけですが、今日、クッキーとお手紙をいただいて……」
「そうかぁ、そうかぁ、君が『ピアノのおねえちゃん』かぁ。ありがとう、ありがとう」
息子先生はがははと豪快に笑い、白い歯が見えた。
張りつめていた緊張が少し溶け、おおらかに笑う姿は、私の父と重なった。
先生と二人、衣笠クリニックを後にして、駐車場に置いてあった青い車に乗り込んだ。
「大したことなくてよかったね。……傷は」
先生はそう話すが、全く笑っていない。
長年、母も私の前でそんな顔をしていたから、先生のその顔も、自分がそうさせているような感覚になる。
「……奏馬さん、ごめんなさい。こんなに、お世話になってしまって」
「そんなのいいよ。謝るなよ」
「でも……ごめんなさ」
「謝るなって!」
強い口調に、ビクッと体が震えてしまった。
「……更紗ちゃん。この人、ゆいちゃんのパパだよ」
「え!? ゆいちゃんの!」
驚くのも失礼なのだが、風貌が違いすぎて声を上げてしまった。
ゆいちゃんは完全にお母様似のようだ。
「うちのゆいとお知り合い?」
息子先生はにこにこ笑いながら、座っている椅子の背にギっと体重を掛けている。
「あ、はい。クリスマス会で話しただけですが、今日、クッキーとお手紙をいただいて……」
「そうかぁ、そうかぁ、君が『ピアノのおねえちゃん』かぁ。ありがとう、ありがとう」
息子先生はがははと豪快に笑い、白い歯が見えた。
張りつめていた緊張が少し溶け、おおらかに笑う姿は、私の父と重なった。
先生と二人、衣笠クリニックを後にして、駐車場に置いてあった青い車に乗り込んだ。
「大したことなくてよかったね。……傷は」
先生はそう話すが、全く笑っていない。
長年、母も私の前でそんな顔をしていたから、先生のその顔も、自分がそうさせているような感覚になる。
「……奏馬さん、ごめんなさい。こんなに、お世話になってしまって」
「そんなのいいよ。謝るなよ」
「でも……ごめんなさ」
「謝るなって!」
強い口調に、ビクッと体が震えてしまった。

