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秘密のピアノレッスン
第16章 呪縛から
ひとくちずつ、ゆっくりとそれを飲む私を、先生は頬杖をついて見ていて、たまに瞼に視線が移る。

「もうあんまり痛くないよ」と言うと、「よかった」と神妙に微笑まれた。

「学校まで送ろうか。もし、家に寄りたければ寄るよ」

先生はまるで私の心を読んでいるみたい。

……そろそろ、母は家に戻っただろうか。
手紙は読んだかな。
もしかして、万が一、心配して私のことを探したりしてないかな。って、そう思っていたから。

「ちょっと寄りたい……」
「だよね。了解」

先生はわかっていたように頷いた。


支度を終えて車に乗る。今日はとても寒い日だ。外部受験をする生徒たちは正念場の時期で、来週からは自由登校になる。
私はお気楽なものだけど。

「奏馬さん、さっき実家に帰ったの?」
「うん。ちょっと調べたいことがあったから。親は寝てたから会ってない」
「調べたいこと?」
「あ、もう着いたよ。俺も行こうか」

車はすぐ私の家についてしまい、質問は空振りになった。
門の締め具合も、何となくの佇まいも、昨日と変わっていない予感がしたから、ひとりで確かめることにした。
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