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秘密のピアノレッスン
第19章 鳥籠
そっとグランドピアノを開けて楽譜を置いて、甘く優しく軽やかに、時には重く鍵盤に触れる。
先生を想いながら、先生に教わったとおりに大事に触れて奏でる。
この旋律とともに、先生が作ってくれた思い出や、初めて知った恋愛、教えてくれたいろんな感情が湧きでて――。

弾き終えた時には涙が伝い落ちていた。

頬を伝った涙の跡が痛い。
先生を好きな気持ちがどうしても消えない。
会いたい思いは日ごと募り、どうにもできない。

先生は、こうなることを予想していたのかな。
最後抱かれた時に囁いたあの言葉どおり、もう、会えなくなってしまった。


『俺は、ずっと好きだから……それは忘れないで』
あの言葉を支えに今過ごしているけれど、本当に支えにし続けていいのか、寂しさが心を揺らがせる。

ピアノは辞めさせられた。
留学を理由に大学もパパが入学を取り消したそうだ。
高校は卒業できるそうだが、卒業式を待たずにカナダに行かなければならないなんて。
先生に会えずに、日本を発たなければならないなんて。

私の意思はどこにもない。
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