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秘密のピアノレッスン
第19章 鳥籠
奏馬さんのマンションに着くと、言っていたとおり荷造りがされてあって、そのままの形で置かれているのはあのアップライトピアノとソファだけだった。

この部屋で……奏馬さんに恥ずかしいお願いをして、私の寂しさを幾度となく紛らわせてくれた、思い出の場所。

その小部屋に入った途端、後ろから強く抱きしめられて、腕の強さが切なくなった。
それだけ、奏馬さんに心配を掛けていたことが伝わってきて、また目頭が熱くなる。

衣笠クリニックにかかる予定で屋敷を出たこと、数日後カナダに発つ予定だったこと、そんな話を奏馬さんにしながら、包み込むように抱きしめられる。

「……更紗が無事でよかった」

奏馬さんの胸で、また涙が溢れて止まらない。

「目元の傷はだいぶ消えたね。よかった」

奏馬さんの唇が傷跡に触れて、深い安らぎと少しのときめきを覚えた。
この人に触れられるだけで私は、こんなにも安心するのだ。

「更紗……」

耳元で名前を囁かれたら、抗う事など意味もなく、奏馬さんの手が肌を滑り落ちて、うなじにはキスが降り、甘い嬌声の隙間に、柔らかな舌が口元の自由を奪う。
深い口づけの合間に息をすることを許されて、蜜のような唾液が二人を繋ぎ、交わり絡む。

「もう、離したくないよ。全部俺のものにしてもいい?」

ソファに横たわり濃厚な口づけを交わしながら、一つずつ衣服が剥がされて、床に落とされて行く。
以前のように鏡はなく、二人が睦みあう姿は磨かれたアップライトピアノが映し出している。
二人の間に隔たるものがあること自体、間違っている気がしてしまう。

「あぁ、そ、奏馬さん……」

上半身何も纏っていない姿で横たわる奏馬さんに、全裸で跨る私。
丸出しになった二つのふくらみの一つを、奏馬さんが右手で包み込むようにして啄ばむのが、ピアノに映っている。
先からビリっと刺激が走り、くたりと奏馬さんの胸に頬を預けた。
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