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秘密のピアノレッスン
第1章 イントロダクション
張りつめた空気が和らぎ、先生が、チェストの引き出しをいくつか開けている。
「レッスン終わったら出席シール貼るんだっけ。えーっと。ここ?」
出席シールは一番上の引き出しだ。
「あの、ここです。ここにシールが……」
「さすがよく知ってるね。シール好きなの?」
かぁっと顔が熱くなる。
小さい頃からずっと貼り続けてきたから、高校生になった今でも当たり前のように続けていたけれど、冷静になれば、小さい生徒がすることだよね……?
「いつも……貼ってるので……」
ちょっと恥ずかしくなりながら、くまさんのシールを選んで台紙に貼った。
昔からくまは好きなんだけれど……趣味が幼いよね。
奏馬先生の年齢はよくわからないけれど、たぶん27…8ぐらいだろうか。
佳苗先生と同じ音大に入学したと、昔々聞いた記憶がある。
私も、音大に進みたいと人知れず思っていた時があったけれど、才能がないから諦めた。
「音大に行きたい? 笑わせないで。あなたにそこまでの才能はないからやめておきなさい」
ママがそう言っていたから、付属の女子大に進むことに決めて、受験とは無縁の生活を送っている。
それでも、才能がなくても音楽を手放す勇気もなく、佳苗先生と離れるのも寂しくて、ピアノ教室に通い続けていた。
「レッスン終わったら出席シール貼るんだっけ。えーっと。ここ?」
出席シールは一番上の引き出しだ。
「あの、ここです。ここにシールが……」
「さすがよく知ってるね。シール好きなの?」
かぁっと顔が熱くなる。
小さい頃からずっと貼り続けてきたから、高校生になった今でも当たり前のように続けていたけれど、冷静になれば、小さい生徒がすることだよね……?
「いつも……貼ってるので……」
ちょっと恥ずかしくなりながら、くまさんのシールを選んで台紙に貼った。
昔からくまは好きなんだけれど……趣味が幼いよね。
奏馬先生の年齢はよくわからないけれど、たぶん27…8ぐらいだろうか。
佳苗先生と同じ音大に入学したと、昔々聞いた記憶がある。
私も、音大に進みたいと人知れず思っていた時があったけれど、才能がないから諦めた。
「音大に行きたい? 笑わせないで。あなたにそこまでの才能はないからやめておきなさい」
ママがそう言っていたから、付属の女子大に進むことに決めて、受験とは無縁の生活を送っている。
それでも、才能がなくても音楽を手放す勇気もなく、佳苗先生と離れるのも寂しくて、ピアノ教室に通い続けていた。