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どうか、その声をもう一度
第1章 はじまりの記憶

沙英。初めて身体を重ねた次の日、君はどこかへ行ってしまったね。俺はバカなやつだから、君に出会える可能性に縋って、進路を島内での就職から本土の大学へと変えたんだ。

俺の変わり映えのないくだらない毎日の出来事の話を楽しそうに笑って聞いてくれていた顔も覚えているよ。

もう一度、抱き締めたい。触れたい。俺の名前を呼ぶ声が聴きたい。

今、君はどこで何をしているのだろう。俺のことなんて忘れてしまったかな。

訊きたいことがたくさんあるんだ。でも、もし、また君に会うことが出来ても、俺は何ひとつ問うことが出来ないかもしれない。

あの夏、何故、島に来ていたのだろう。何故、俺になにも言わずに姿を消してしまったのだろう。

俺はあの時、確かに君のことを好きになっていたけれど、君は俺をどう思っていただろう。

ああ、やっぱり、過去のことなんてなんだっていいや。今、君が元気で笑っていてくれたら。







なあ、沙英。俺、もう一度、君に会うことが出来るかな。
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