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キズナツナグモノガタリ ~誠の男と性の少女~
第7章 最終決戦! 土方歳三!!
 夜の十時。江戸川の河川敷。

 細い月が夜空に昇り、月明かりに影を伸ばして俺達三人が対峙する。

 俺と花楓、そして精悍な顔つきをした男。
 新選組副長、土方歳三。

「臆せずよく来た、小次郎。礼を言う」
「礼?」
「ああ」

 細い月を映し、その中に俺を捉えた瞳は切れ長でいっそ涼し気と言える。
 渋い雰囲気と圧倒的な剣気。まだ抜刀もしていないのに肌がひりひりするほどの圧力を感じる。

 土方歳三の第一印象は「強そう」という、ただそれだけの単純なものだった。

 剣気に圧されなかった俺に満足そうにひとつ頷いて、土方が言葉を連ねる。

「お前にはもう戦う理由はないはずだ。俺は無意味に人を斬るつもりはない。近藤や沖田の仇討ちなどと騒ぐつもりもない。
 俺にもお前にも戦う理由は、ない」
「…かもな」
「では、何故ここに来た?」

 段だら模様の羽織の中で腕を組み、土方が問う。

「何でかな、何でだろうね」
「ふむ?」

 懐手を解き、顎に手を当てて土方が頷いた。
 今の言葉といい仕草といい、近藤にそっくりだ。

「今の…近藤の真似?」
「いや…どうも癖でな。癖というのは死んでも直らんらしいな」

 苦笑して土方が手を下ろす。左手を腰に帯びた刀の柄に置く。

「あんたにも戦う理由はないんだろ?」

 逆に問われて土方がもう一度「ふむ」と顎に伸びかけた手を制して頷く。

 …その癖、ちょっと意識してんだな。

「ないな」

 その答えは明瞭だった。

「ない、が剣客として戦いたい。俺は新選組に生涯を捧げた身だ。俺の生き方は強い新選組そのものでもある。だから仇討ちなどという気持ちもない。ないが…」

 すっと目が細くなる。宿る光が鋭い。

「近藤や沖田を倒したお前に興味がある。このまま新選組が負けたままってのも癪に障る。最後に勝つのは俺でありたい」
「へへ…」
「何だ?」
「いや」

 俺は思わず零れた笑みを手のひらで拭う。

「それを仇討ち、っていうんじゃないのか?」
「ふむ?」

 意外なことを言われたせいか、今度は「近藤癖」を隠さず土方が頷いた。
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