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キズナツナグモノガタリ ~誠の男と性の少女~
第8章 戦いが終わって
「話は終わった?」

 墓の前に膝を付く俺に並び、音をさせない動きで花楓の膝が畳まれる。

「ああ」
「何を話したの?」

 四角柱の墓石には「近藤勇」の名が刻まれている。そして「土方歳三」の名も。

 近藤と土方の亡骸はここにはない。それでも二人を悼むこの墓を作ったのは、新選組の永倉新八。その永倉の墓もすぐ近くに立っている。本人の希望だそうだ。

 最後は袂を分かったとはいえ、いや最後の最後で袂を分かってしまったからだろうか。永倉の真意はもう分からないが、そこに「誠」の旗の下に集った男達の『絆』を感じることが出来る。

 流山は近藤の最後の戦いの地だった。俺達が戦いを繰り広げた江戸川には近藤勇の最後の陣屋敷がある。

 だから近藤はここを戦いの場に選んだのか。

 墓の前に並ぶ二振りの刀。

 長曽祢虎徹と和泉守兼定。

 虎徹の鞘の鍔元には、いかつい顔の近藤とそれを囲む女子高生達のプリクラが貼られている。

「ありきたりなことさ」
「ふぅん」

 静かに手を合わせて花楓が言う。

「あたしも、ありきたりにお礼でも言っておこうかな」

 また風が吹く。供えられた花を揺らす。
 その風には春の匂い。血の匂いも戦いの匂いもしない。平和な暖かい春の風。

「さ、行こう。お母さんがお昼作って待ってるよ」
「うん」

 ミニスカートの奥に魅惑的なおパンツ様を一瞬見せて花楓が立ち上がる。
 そして今日も俺を置いて先に歩き出す。

 虎徹と兼定を包んで花楓の後に続いて歩き、最後にもう一度振り返る。

 冬休みの間の短い戦い。たくさんのことを教えてもらった。なのに俺は結局、近藤や土方に何も言えなかった。

 …まあ、いいや。また来るから。

「小次郎」

 春の日差しのように暖かい声。

「帰るよ」
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