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キズナツナグモノガタリ ~誠の男と性の少女~
第4章 脱童貞! 宮本小次郎!!
 かたん。ストーブの中で灯油が動いたのか、軽い音が部屋に響く。その音に花楓は目を伏せた。顔が下がる。

「花楓…」

 俺が呼ぶと、その声を辿るようにゆっくり顔を上げた。瞳が期待と不安に揺れている。

 触れ合った視線。小刻みに震える体。

 俺、やっぱり花楓のこと…

 顔を寄せていくと、覚悟を決めたように目を閉じた。桜の色に染まった頬を濡らす涙に蛍光灯の光が反射して、とても綺麗だった。

 お互いの息が吸い込めるくらいに顔が近付き…

 かつん。

「い…っ!」

 口をおさえて花楓が身体を離す。目が「信じられない」と言って…いや罵倒している。

 勢い込んだ俺のファーストキスは、勢いが付き過ぎて歯と歯が見事に正面衝突をした。

 …痛い、いろんな意味で。

「あんた…馬っ鹿じゃないの!?」
「悪い…っていうか俺、こういうのはじめてで」
「あたしだってはじめてよ! もう…ちゃんとしてよ…」

 いつもの調子で詰め寄った後、最後は言葉が小さく萎んだ。
 まあ、それも仕方がない。というか完全無欠で俺が悪いのだろうけど。

 俺だって緊張してるんだって…

「ごめん、もう一回」

 花楓の顔を正面から覗き込む。花楓は小さく息を吐き、そして静かに目を閉じた。

 花楓の息は震えている。きっと俺も同じ。
 震えているのも、二人の気持ちも、きっと、同じ。

 軽く唇同士が触れ合った。ほんの短い時間、表面同士が触れるだけの、短いキス。
 俺にとっても、花楓にとってもはじめての、キス…

 花楓が恥ずかしそうに顔を伏せた。息が苦しいのか、両手を胸の上に重ねている。

「小次郎…」
「…ん?」
「…もう一回」
「うん…」

 今度のキスは長かった。長くて深い。お互い数少ない知識を総動員して大人のキスを探り合う。

 偶然のように舌と舌が触れた。
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