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記憶の彼方に眠る恋
第6章 両親の決断、紗友莉たちの苦悩

望未が帰ってからしばらくして拓麻が帰宅すると、まっすぐリビングに入ってきて、両親に向かって言った。
「やっぱり、今回の話はナシにしてほしい。伊集院さんと結婚する気は、これっぽちもないよ」
拓麻の父は嘆息しながら言う。
「またそれか。このところ毎日言ってくるな。いいか、お前のためを思って、進めている話なんだぞ。それに、既に話は進んでいて、今さら取り消すことなんか絶対にできない」
「まだ渡米したわけじゃないし、今なら取り消しできるはずだ」
「あのな……。今のお前は、望未さんのことを覚えていない状態だから、そんな態度を取れるんだ。記憶を失う前のお前は、この婚約に自分で承諾したんだよ。今さら、やっぱりやめますっていうことになれば、望未さんのご親戚やご両親も気を悪くされるはず。既に、婚約を解消した時点で、多大な迷惑をかけているのに、今回またそうして取り消しとなれば、気を悪くされて当然だ。そうなると困るのは、記憶を取り戻した後のお前だよ。そんなことにならないよう、お前のためを思って、取り計らってやっているんだ」
ここで拓麻の眉がピクリと動いた。
「今、『承諾した』って言った? どう考えても、記憶を失う前の俺自身がすすんでこの婚約を望んでいたようには全く聞こえないな」
「やっぱり、今回の話はナシにしてほしい。伊集院さんと結婚する気は、これっぽちもないよ」
拓麻の父は嘆息しながら言う。
「またそれか。このところ毎日言ってくるな。いいか、お前のためを思って、進めている話なんだぞ。それに、既に話は進んでいて、今さら取り消すことなんか絶対にできない」
「まだ渡米したわけじゃないし、今なら取り消しできるはずだ」
「あのな……。今のお前は、望未さんのことを覚えていない状態だから、そんな態度を取れるんだ。記憶を失う前のお前は、この婚約に自分で承諾したんだよ。今さら、やっぱりやめますっていうことになれば、望未さんのご親戚やご両親も気を悪くされるはず。既に、婚約を解消した時点で、多大な迷惑をかけているのに、今回またそうして取り消しとなれば、気を悪くされて当然だ。そうなると困るのは、記憶を取り戻した後のお前だよ。そんなことにならないよう、お前のためを思って、取り計らってやっているんだ」
ここで拓麻の眉がピクリと動いた。
「今、『承諾した』って言った? どう考えても、記憶を失う前の俺自身がすすんでこの婚約を望んでいたようには全く聞こえないな」

