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記憶の彼方に眠る恋
第6章 両親の決断、紗友莉たちの苦悩

しかし、事態は全く進展しない。
紗友莉は拓麻と共に、八方手を尽くして、どうにか記憶の糸口を探ったが、依然として深い闇の中でもがいているような状態に変わりはなかった。
そして、近づいてくる期限が、二人を焦らせていく。
紗友莉は、「拓麻と離れ離れになってしまうこと」や、「愛する拓麻が、他の女性と正式に婚約してしまうこと」などに対して、大きな不安と焦燥感を感じていた。
期限までおよそ2週間となった土曜日、拓麻の部屋にて拓麻と二人っきりのとき、追い詰められたような心持ちになっていた紗友莉が言う。
「ねぇ、思いついたんだけど……」
「何だ?」
「事故現場には、もう行った?」
「そういえば行ってないな。……行ってみようって言うのか?」
「あ、いや、その……」
好奇心からそんなことを提案していると思われたくなくて、紗友莉は言葉を探した。
拓麻は平然と言う。
「なるほど、記憶を失うキッカケとなった場所へ行くことで、もしかしたら記憶を取り戻すかもしれない……と、そう思ったわけだな。もっともな考え方だ」
記憶を失う前の拓麻とは、主に高校時代、それまでの長い付き合いの影響か、以心伝心の関係だった二人。
しかし、記憶を失った今の拓麻に、言葉なしで考えが伝わったことに、紗友莉は驚くとともに大きな喜びを感じていた。
事故現場へ行くことに対して紗友莉が感じていた大きな抵抗感は、消えることはなかったが。
「拓麻……。提案した私が言うのも何だけど……現場へ行って、本当に大丈夫かな」
「うーん、俺は事故自体の記憶も全く無いわけだし、何も問題はないだろ。事故現場がどこなのかということに関しては、記憶を取り戻した後の病室で、両親から聞いたから大体分かってるし、行ってみるか」
「う、うん……」
他に何も、記憶を取り戻すための手を思いつかない紗友莉は頷いた。
紗友莉は拓麻と共に、八方手を尽くして、どうにか記憶の糸口を探ったが、依然として深い闇の中でもがいているような状態に変わりはなかった。
そして、近づいてくる期限が、二人を焦らせていく。
紗友莉は、「拓麻と離れ離れになってしまうこと」や、「愛する拓麻が、他の女性と正式に婚約してしまうこと」などに対して、大きな不安と焦燥感を感じていた。
期限までおよそ2週間となった土曜日、拓麻の部屋にて拓麻と二人っきりのとき、追い詰められたような心持ちになっていた紗友莉が言う。
「ねぇ、思いついたんだけど……」
「何だ?」
「事故現場には、もう行った?」
「そういえば行ってないな。……行ってみようって言うのか?」
「あ、いや、その……」
好奇心からそんなことを提案していると思われたくなくて、紗友莉は言葉を探した。
拓麻は平然と言う。
「なるほど、記憶を失うキッカケとなった場所へ行くことで、もしかしたら記憶を取り戻すかもしれない……と、そう思ったわけだな。もっともな考え方だ」
記憶を失う前の拓麻とは、主に高校時代、それまでの長い付き合いの影響か、以心伝心の関係だった二人。
しかし、記憶を失った今の拓麻に、言葉なしで考えが伝わったことに、紗友莉は驚くとともに大きな喜びを感じていた。
事故現場へ行くことに対して紗友莉が感じていた大きな抵抗感は、消えることはなかったが。
「拓麻……。提案した私が言うのも何だけど……現場へ行って、本当に大丈夫かな」
「うーん、俺は事故自体の記憶も全く無いわけだし、何も問題はないだろ。事故現場がどこなのかということに関しては、記憶を取り戻した後の病室で、両親から聞いたから大体分かってるし、行ってみるか」
「う、うん……」
他に何も、記憶を取り戻すための手を思いつかない紗友莉は頷いた。

