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記憶の彼方に眠る恋
第2章 過去の恋、現在の憧れ
 そんな気持ちをごまかすかのごとく、紗友莉は半ば無意識のうちに頭へと右手を伸ばし、今まさに着用中であるライトブルーのシュシュに軽く触れる。
 このシュシュは、職場の鳴澤(なるさわ)部長から誕生日プレゼントとして貰ったものだ。
 鳴澤部長は部下思いで気配り上手なので、紗友莉に限らず、企画部内の部下全員に対し、食事を奢ったり、プレゼントを渡したりすることが度々ある。
 なので、「これも、優しい部長の心遣いの一つであり、他意はないのだろう」と紗友莉はほとんど確信していた。
 ただ、「少なくとも嫌われてはいないはず」「憎からず思ってはもらえているはず」という部分については、自信がなくもなかった紗友莉。
 なぜなら、鳴澤部長はこれまで何度も日曜や祝日に、紗友莉を含む企画部社員数名を誘い、映画館へ連れて行ってくれたこともあったからだ。
 企画部所属社員の中でも、紗友莉の親友と言っても差し支えない坂井綾子(さかい・あやこ)と、紗友莉の二人は、特に頻繁に誘ってもらっていたので、紗友莉がそんな自信を抱くことも無理ないことだろう。
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