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記憶の彼方に眠る恋
第2章 過去の恋、現在の憧れ

それから約2週間後、金曜の夕方―――。
この日は、午前中は快晴だったのだが、午後に入ってから天気が急変し、仕事終わりの午後5時にはすっかり大雨になってしまっていた。
すると、いつもマイカー通勤している鳴澤が、親切にも紗友莉と綾子に「駅まで車で送ろう」と声をかけてくれ、二人は最初は申し訳ないので遠慮しようとしたのだが、結局は厚意に甘えることに。
そんなわけで、職場の最寄り駅へと向かう車中、後部座席に紗友莉と綾子の姿があった。
外の風雨は猛烈で、窓の外がほとんど見えなくなるほどだ。
しばしの他愛もない雑談の後、綾子が運転席の鳴澤に向かって、やや身を乗り出しながら言った。
「部長、わざわざ本当にすみません。紗友莉も私も、折りたたみの傘は持ってきてるのに、こうして送っていただくなんて」
ハンドルを握る鳴澤は、前方を向いたまま、いつもどおり穏やかな声で言葉を返す。
「いえいえ、私も駅前に少し用事があるので、ちょうどよかったんだよ。折りたたみの傘じゃ、これほど猛烈な雨を防ぎきれないだろうし。大したことじゃないから、気にしないでね」
綾子が「本当にありがとうございます」と告げると、今度は紗友莉が口を開いた。
「ありがとうございます。本当に部長はお優しいです。昨年末の大雨の日も、傘をうっかり忘れた私に向かって、スッと傘を差し出してくださいましたし。あのときの部長のお優しさも忘れられません。本当に、たびたびすみません」
「いえいえ、気にしなくていいんだよ」
そんなことを話しているうちに、車は駅前のバスターミナルへと差し掛かっていた。
この日は、午前中は快晴だったのだが、午後に入ってから天気が急変し、仕事終わりの午後5時にはすっかり大雨になってしまっていた。
すると、いつもマイカー通勤している鳴澤が、親切にも紗友莉と綾子に「駅まで車で送ろう」と声をかけてくれ、二人は最初は申し訳ないので遠慮しようとしたのだが、結局は厚意に甘えることに。
そんなわけで、職場の最寄り駅へと向かう車中、後部座席に紗友莉と綾子の姿があった。
外の風雨は猛烈で、窓の外がほとんど見えなくなるほどだ。
しばしの他愛もない雑談の後、綾子が運転席の鳴澤に向かって、やや身を乗り出しながら言った。
「部長、わざわざ本当にすみません。紗友莉も私も、折りたたみの傘は持ってきてるのに、こうして送っていただくなんて」
ハンドルを握る鳴澤は、前方を向いたまま、いつもどおり穏やかな声で言葉を返す。
「いえいえ、私も駅前に少し用事があるので、ちょうどよかったんだよ。折りたたみの傘じゃ、これほど猛烈な雨を防ぎきれないだろうし。大したことじゃないから、気にしないでね」
綾子が「本当にありがとうございます」と告げると、今度は紗友莉が口を開いた。
「ありがとうございます。本当に部長はお優しいです。昨年末の大雨の日も、傘をうっかり忘れた私に向かって、スッと傘を差し出してくださいましたし。あのときの部長のお優しさも忘れられません。本当に、たびたびすみません」
「いえいえ、気にしなくていいんだよ」
そんなことを話しているうちに、車は駅前のバスターミナルへと差し掛かっていた。

