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記憶の彼方に眠る恋
第6章 両親の決断、紗友莉たちの苦悩
 それから僅か2日後。
 小雨が降る中を、美香は一人、傘も差さずに歩いていた。
 2日前、紗友莉たちと集まったときに、ちらっと話には出た彼氏が、「さよなら」という短いメッセージを寄越した後、なんと音信普通になってしまったのだ。
 美香はその理由をはっきり理解していた。
 その彼氏は相当チャラい男で、時間にもお金にもルーズであり、ちょうど1週間前から、美香に数万円の借金をしていたのだ。
 つまり、先方から一方的に別れのメッセージを突きつけて姿をくらますことで、借金を踏み倒したとみて間違いないだろう。
 美香にもちゃんと分かっていた。
 ポツリと、「また騙されちゃった……」と美香は独り言を呟く。
 周囲の人通りは少ない上に、雨音や車のエンジン音などもあり、その独り言を誰かに聞かれる心配は一切なかった。



 あてもなく歩き続ける美香は、いつしか淳次の家の近くまで来ていたらしい。
 時刻は既に午後7時を回っており、以前本人が「いつも7時ごろ帰宅する」と言っていたのを、美香はしっかり覚えていた。
 心の中で「無意識のうちに、淳次君に慰めてもらおうと、自然とこっちに歩いてきちゃうなんて、やっぱり今の私は相当落ち込んでるんだなぁ」などと思いつつ、美香は重い足取りで進んでいく。
 雨は少しずつ本降りになってきたようで、美香の頭や肩を勢い良く濡らし始めている。
 そんなとき、突然、誰かがスッと広げた傘を美香の頭上に差し出し、美香が濡れないようにしてくれた。
 ハッとして、右横を向き、傘の主を確認する美香。
 美香が心のどこかで期待していたとおり、傘を差し出してくれていたのは淳次だった。
 いつか、紗友莉に電話した際に、紗友莉が言っていた「傘をスッと差し出す優しさ」という言葉が美香の脳裏に甦ってくる。
 淳次は最初、ニヤニヤ笑っていたのだが、美香の顔を見た途端、真剣な表情をして言った。
「美香、どうした? 何かあったのか?!」
「うん、ちょっとね……。傘、ありがとう。淳次君のお宅にお邪魔してもいい?」
「いいぞ。一緒に行こう」
 相合傘で、二人は淳次の暮らすアパートへと向かった。
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