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第6章 両親の決断、紗友莉たちの苦悩

　父親は冷静な様子で言った。
「そういうわけではもちろんない。アメリカでは実に４年もの月日を過ごしたから、現地の友人に会ったり、当時住んでいた街を歩いたりすれば、記憶を取り戻すキッカケになるのかも、と思ってな」
「それはそうとしても、なんで伊集院さんだっけ、その人が出てくるわけ？」
「実は伊集院さんとの縁談は、さっき言ったニューヨーク在住の親戚を通じて持ち込まれたものでな。で、これもさっき言ったとおり、ニューヨークには望未さんのご両親が住んでらっしゃっていて、かなり近所であるということから親交があり、そういう話に至ったわけだ。だから今回もきっと、伊集院さんの助力も得ることができるだろうと思ってな」
　この話を聞き、世界が止まってしまったかのように錯覚するほど、大きな衝撃を受ける紗友莉。
　とある理由から、自分は海外へ着いていけないので、この話がまとまってしまうと拓麻とはもう簡単には逢えなくなってしまうのだ。
　依然として不服な様子の拓麻が言った。
「いきなりそんな話をされても……。心の準備ってものが……」