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記憶の彼方に眠る恋
第6章 両親の決断、紗友莉たちの苦悩
 だが、拓麻は僅か数秒後、再びキスを再開しつつ、その合間に言った。
「そうか……じゃあ、俺は絶対にアメリカへ行かない。両親が分かってくれないのなら、勘当されても構わない。お前と一緒にいたい。二人っきりで逃げ出して、誰も追ってこれない場所で暮らそう」
「……拓麻……」
 愛する拓麻にここまで言われ、紗友莉の胸がキュッとなった。
 ただ、紗友莉の中の理性が、懸命にブレーキをかけ、言いづらい言葉を無理やり言わせていく。
「でも、そんなことしちゃうと……拓麻が記憶を取り戻したとき、後悔することになるよ……」
「俺は記憶を失くす前から、きっとお前に惚れていた。後悔なんかするはずがない」
「……あと、私の両親とも……会えなくなっちゃうから……それはつらい……」
「なるほど、紗友莉が親思いなのは、記憶を失くした今の俺にもはっきり分かるし、それはそうか……。じゃあやっぱり、俺が記憶を取り戻すしかないな……。期限の1ヶ月先までに……!」
 唇を真一文字に結んで言う拓麻。
 強引さを見せつつも、決して我を通すことはなく、紗友莉の意見をしっかり汲み取ってくれる拓麻の優しさを感じ、紗友莉の心はますます、強く強く拓麻に惹かれていた。
 もう、恍惚と悦びの表情を隠すことができないほどに。
 元々、拓麻が優しいことは、長い付き合いから重々分かっていた紗友莉だったが、久々にそれを感じさせられたのだ。
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