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臥龍の珠
第2章 梁父の吟
翌朝、庵の周囲は深い霧に包まれていた。田畑や森も、白く霞んで何も見えない。ただ甲高い鳥の声だけが、静けさの中に響いていた。
「おはようございます」
珠が目覚めると、亮は既に身繕いを終えていた。慌てて起き上がるが、亮がそっと押し止めた。
「お疲れだったのでしょう。既に朝餉の支度も整いました。まずは皆で食事にいたしましょう。この家の細々(こまごま)したことは、食事の後にお教えします」
「申し訳ありません……」
気恥ずかしさで珠は頬を赤く染めた。もう黄承諾彦の娘ではなく、諸葛亮の妻なのだ。使用人にかしずかれて過ごすのではなく、諸葛兄弟と共に働かねばならない。
「霧が晴れたら森の中もご案内しましょう。緑を身体に感じながら散策をするのも、なかなか楽しいものですよ」
「はい……」
手早く髪を結い上げ、衣服を替える。夫婦に均を交えた三人で囲む食卓は、質素ながらも充実したものだった。
「ごちそうさまでした。早速この家のことを色々教えていただけますか?」
「わかりました」
元来人懐こい性格の珠が、諸葛兄弟と馴染むのに、それほど時間はかからなかった。
「おはようございます」
珠が目覚めると、亮は既に身繕いを終えていた。慌てて起き上がるが、亮がそっと押し止めた。
「お疲れだったのでしょう。既に朝餉の支度も整いました。まずは皆で食事にいたしましょう。この家の細々(こまごま)したことは、食事の後にお教えします」
「申し訳ありません……」
気恥ずかしさで珠は頬を赤く染めた。もう黄承諾彦の娘ではなく、諸葛亮の妻なのだ。使用人にかしずかれて過ごすのではなく、諸葛兄弟と共に働かねばならない。
「霧が晴れたら森の中もご案内しましょう。緑を身体に感じながら散策をするのも、なかなか楽しいものですよ」
「はい……」
手早く髪を結い上げ、衣服を替える。夫婦に均を交えた三人で囲む食卓は、質素ながらも充実したものだった。
「ごちそうさまでした。早速この家のことを色々教えていただけますか?」
「わかりました」
元来人懐こい性格の珠が、諸葛兄弟と馴染むのに、それほど時間はかからなかった。